着物ブームが起きた。
今や着物は街の人気者である。
着物を着る人はキモラーと呼ばれ、持てはやされた。
そこで俺は考えた。
「俺も着物を着て人気者になる!」
俺は古着屋に行っていちばん安い着物一式を揃えて着てみた。
ちょっと小さいが上手く着られた。
俺は胸を張って外に出た。
「俺もキモラーデビューだ!」
すると道行く女が言った。「おまえなんかキモラーじゃない」
「じゃあ何だよ」
「ただの女装変態だ」
俺が値段だけ見て買った着物は女ものだった。
(遠野秋彦・作 ©2021 TOHNO, Akihiko)